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Memory of Night 2
第40章 罪
ポールダンスを終えた直後、露出の激しい衣装のまま客たちの席をまわっていると、突然テーブルの下に引きずり込まれた。
チップを全身に捩じ込まれ、代わりに露出した下半身を目の前に突き出される。規約的にはもちろんアウトだが、目撃した誰も、表立った注意はしなかった。これくらいのことは、当事の店では黙認されていた。
最初は酷い嫌悪があったが、繰り返していくうちに何も感じなくなった。慣れていくものなんだな、と、千鶴はどこか他人事のように感じていた。
その時だった。急にフロアがざわつき始める。自分の名を呼ぶ声が聴こえた。しかも春加じゃない、捨てたはずの本名だ。
テーブルの下から顔だけをドアの方に向けると、入り口に立つ人影が狭い視界の中に映る。
千鶴は腕を押さえている男の手を振りほどき、必死にテーブルの下から這い出した。
目前に桃華がいた。呆然と立ちすくみ、千鶴を見下ろしていた。
見慣れた灰色の瞳が悲しげに歪んだ瞬間を、千鶴は見てしまった。
露出した肌、ほとんど脱がされてしまった過激な衣装と散らばった万札、乱れた髪。千鶴がこれから何をしようとしていたのか、純粋な桃華にだってわかったはずだ。ここがどんな『バー』なのかだって。