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Memory of Night 2
第40章 罪
よく見ると、彼女のティーシャツとジーンズは湿っていた。
なすすべもなくあっという間に入り口のドアまで引きずられる。
ドアをくぐらされ、閉められた直後。
「離せよ……っ!」
千鶴は叫び、姉の手を力一杯振り払った。
本気の抵抗が伝わったのだろう、桃華はようやく千鶴を外へ連れ出そうとするのをやめた。
フロアのドアから地上に出るまで、長い階段がある。その下で、二人は対峙していた。
外は朝から雨だった。フロアの音楽が途絶える、雨音がうるさく響く。
千鶴は声を荒げた。
「あたしが選んでやってることなんだよ、全部! ここで働いてるのも、この格好も、全部あたしの意志なんだ!」
「……なんでこんな特殊なバーなの? もっと普通の店でいいだろ?」
「ここならショーに出たりできるの! あたしはもっと華やかな世界で生きていきたいんだよ!」
「それなら、もっと違う方法があるだろ! そんな格好……」
千鶴ははっとしたように、上半身を両手できつく抱きしめた。衣装は脱がされ、布地の狭い下着すら半分ズラされた酷い格好だった。
店では許されても、一歩外へ出れば変質者だ。自分の居場所だと思っていた場所がどれほど閉鎖的で特殊な場所か突きつけられている気がした。