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Memory of Night 2
第40章 罪
数えきれないほどの罪を犯した。大きな罪を犯し、それをごまかすために小さな罪を幾つも重ねた。全部箱に押し込めて、何重にも鍵をかけて、見ないフリを繰り返していたら、いつの間にかその罪を詫びることすら叶わなくなってしまっていた。
「なんで急にいなくなるんだよ……」
涙が止まらなかった。際限なく流れて、服の上にぼたぼたと落ちる。
ーーあんな形で別れたまま桃華がまさか事故で死ぬなんて、夢にも思わなかった。
何一つ、伝えたいことを伝えられないままだったのに。
「ねえ……桃華……」
ぐにゃりと歪んだ世界の中で、千鶴はゾンビのように右腕をあげた。脇腹を襲う強烈な痛み、全身にまわる毒のような痺れ。呼吸も浅く不安定で、苦しかった。
土壁から、わずかに背中が離れる。千鶴は桃華の面影に向かい必死に両腕を伸ばした。
ーーあの日、桃華が差し出してくれた手を掴めていたら。あのまま店を飛び出していたら、自分の人生はもっと違うものになっていただろうか。昔のようにまた、姉と笑って過ごせていたのだろうか。
雪の降り積もる真っ白な世界で、差し出された手を素直に掴めたあの頃のように戻ることができたのだろうか。