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Memory of Night 2
第40章 罪
どこから、どうして? どこまでが正しくて、自分は何を間違えてしまったのだろう。
「お姉ちゃ……っ」
喉の奥につっかえて、潰れたような声が漏れた。千鶴の指が、服を掠める。必死になって掴み、震える手できつく握りしめた。
だが、耳元で響いたのは、姉とは別の声だった。
「俺は……桃華(かあ)さんじゃない」
千鶴はぴくりと頭を動かし、握りしめていた手を緩めた。麻痺してない指は、爪が白くなるほど力を込めていたらしい。血が指先に集まるような感覚があった。
「どうやったって、桃華にはなれない。……悪いけど。ーーあの人はもうどこにもいないんだよ」
突き放すような言葉なのに、声色だけは優しかった。
どうやったってねじ曲げられない真実が、波のように千鶴の胸をつく。
どれほどあの日の言動を悔やんでも、桃華は還ってはこないこと。最初からわかっているはずなのに、それでも千鶴は宵の服を掴んだまま手放せずにいた。
激しい後悔が、涙と嗚咽になって次から次へと溢れてくる。
宵は千鶴の手を無理に引き剥がそうとはしなかった。
代わりに千鶴の背に両腕をまわし、抱きしめてくる。
千鶴はわずかに身じろぎした。最後に桃華に会った時に抱きしめられた感覚が蘇る。