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Memory of Night 2
第40章 罪
けれど、その感触は当たり前に少年のものだった。細くても硬い胸や背中の感触も、とっくに変声期を迎えているであろう声も。桃華とは、はっきりと違うものだった。
それが余計に千鶴を泣かせた。
赤子をあやすように、宵は千鶴の背をさすっていた。
そうしながらぽつりと言った。
「俺も……母さんが死んだってこと。どうやったって会えないんだって事実を受け入れられるようになったの、実際に死んだときから一年くらい経ってからだった」
その時を思い返すように、わずかに間をあける。
「三人で暮らしてた頃のこと、毎日夢に見てた。悲しくて寂しくて、なんかもう全部長い夢で、起きたら家に戻ってねーかなーって思ってたよ。ま、戻ってるわけねーけど」
そこで一瞬苦笑を漏らす。その声がすっと消えて、わずかに宵の声のトーンが下がる。
「……一目だけでも会いたかった」
背中をさする手が止まる。
「……今だって、会えるもんなら会いてーけどさ。でもあん時はずっと、なんで死んだんだってそっちばっか考えちまって。病気でもなく事故だったし、朝まで元気だったのにいきなりすぎて、もう意味わかんなかった。ーーだからずっと、その事実を受け入れられなかった」