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第41章 タイムリミット

　なんともいえない息苦しさを感じ、宵は土壁を掘る作業を中断した。
　口と鼻を覆っていた上着も引き下ろし、数度深呼吸する。
　閉じ込められてずいぶん経過していた。洞穴内の酸素濃度も徐々に低下していっているはずだ。

（そろそろ本気でやべーのかな）

　あとどれくらいここで生きていられるのか、正直見当もつかない。ただ、こうして体感に現れてくると、頭から追い出してもいられなかった。
　宵はスマホを取り出し、ライトで千鶴を照らした。変わらず横たわったままだ。
　身動き一つしない彼女がまだ生きているかどうか、判別できなかった。

（どうにか、出ねーと……）

　宵は右手の石を持ち替え手のひらにライトを当てた。手は血まみれだった。石の角が刺さり、マメができ、潰れ、薄皮が剥げている。爪もボロボロで、酷い有り様だった。ずっと指に力を入れていたせいか、開こうとするだけでガクガクと震えてしまう。痛みも最初は気になったが、もう手のどの部位が痛むのかもわからなかった。
　こんなんじゃ、力も入らない。利き手を諦め、血まみれの石を左手に持ち替えた。
　だが、左手では余計にだめだった。折れている方の足も左で思うように踏ん張れないせいか、なおのこと力を込められない。