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Memory of Night 2
第42章 入院生活

 千鶴は宵の足や右手の包帯に視線を向けた。

「……左足、やっぱ折れてたんだな」
「うん」
「てかその右手の包帯は?」
「あー、指何本か折っちまって。……七本くらい?」
「…………は?」

 千鶴は怪訝な顔で眉間に皺を寄せた。

「なんでだ」
「いや、力いっぱい掘ってたらいつの間にか」

 千鶴は呆れた顔をする。

「……亮が言ってた。ユンボで土壁ぶち破ったって」
「そ、緊縛好きなあのおっちゃんが助けてくれた。結局中からじゃどうにもなんなかったし、指折り損だったぜ」
「……いや」

 千鶴は小さく首を振った。宵の包帯だらけの丸い右手を見つめる。

「硬い岩を叩く音が聞こえたって。まだ生きてるって外に伝わってたし、おまえがいるのがわかったから、土方さんは一度手加減したんだよ。じゃなかったら、崩れた土壁に巻き込まれて二次被害になってたかもな」

 それはそれで、なんて報われない最後だろう。

「……宵」

 つぶやくように名前を呼ばれた。

「何?」
「ーー庇ってくれて、ありがとう」

 視線は斜め右側に逸らされていた。
 入院生活中の彼女は当然すっぴんで、目を囲むアイラインも、真っ赤な唇も何もない。塗装のない素顔を見ていると、彼女の考えていることが汲み取れるような気がした。
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