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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「あんたからの『ありがとう』ほど、気色悪い言葉ってない気がする」
「どういう意味だ」
「……なんだろ。まあ、いーや」
宵は笑った。
千鶴を見ているとどうしても、少し前の自分を見ているような気持ちになるのだった。
桃華と系統の違う顔立ちをしている彼女は単純な容姿だけ見れば、宵とも似ていない。
なのに、性格だけを見れば似ている部分はある。自分とも、桃華とも。
千鶴にその本心を伝えるのはなんとなく嫌で、宵は話題をがらりと変えた。
「……桃華と秋広が離婚しようとした理由、あんた、知らない?」
「多分これかなってのはあるけど、推測だからな。それならあの人に聞けばわかるんじゃない?」
「……あの人?」
「おまえの、義理の母親」
そうかーーと思う。志穂と秋広は関係を持っていたのだから、もしかしたら桃華のことも聞いているかもしれない。
そもそも、あれだけ桃華にゾッコンだった秋広が、他の女性に行くこと自体が宵には釈然としなかった。
なんらかの事情があったのか、本当に急に気持ちが冷め、心変わりしてしまったかしか考えられない。
「……確かめにいくか」
志穂にこの話題は持ちかけづらかった。だが、彼女なら真実を知っている可能性が高い。
妊娠中の今はなるべくストレスを与えたくないので、お腹の子が産まれたら。志穂にきちんと尋ねてみようと思った。

