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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「……いえ」
宵は短く答え、わずかに首を振った。
その感謝の言葉は、店の責任者としてのものだろう。極めて儀礼的なものでしかない。
亮は微かに笑った。髪を下ろしているだけで、雰囲気はまるで違う。だが店にいた頃と変わらず、亮の本意はまったく読み取れないままだ。
千鶴は亮に背を向けた体勢で横になったまま、微動だにしなかった。眠っているのか起きているのかも、判別できない。
ふいに亮は口元を引き結び、真剣な眼差しで口を開いた。
「さっき病院の先生に説明を受けた。左足の骨折と、右の指が七本折れていると。治り具合によっては再度手術を受けるとも聞いた。……大怪我を負わせてしまって、本当に申し訳なかった」
そしてまた、深々と頭を下げた。
「……もういいですって」
そんなに何度も頭を下げられると、逆に宵の方が恐縮してしまう。
だが亮は、深く黙礼したまま顔をあげなかった。そのあとに続く言葉で理由を理解する。
「手前勝手なお願いですまないが、君をうちで働かせていることが公に知られると、店としてもよくない。君のご家族や通っている学校には、本当のことは言わないでほしい」
「……わかってますよ」

