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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「わかりました。確かに、それが一番怪しまれなそうっすね」
「……ご家族に嘘までつかせてしまって、すまないね」
「大丈夫です。ーー嘘は、慣れてるんで」
宵が答えると、亮はわずかに切れ長の瞳を見開いた。だが、それ以上追及されることもなかった。
宵との話が終わると、亮は隣の千鶴の方へと視線を向けた。
千鶴は動かない。唐突に亮は千鶴の手首を掴み、無理矢理体を起こさせた。痛みに千鶴が悲鳴をあげるが、そんなのはお構い無しに強引にベッドの上に座らせる。
起きていたのか、痛みで起きたのか、千鶴は左手で脇腹を押さえ、亮の手を振り払った。
宵に対しての接し方とは、真逆だった。亮の鋭い眼光が、千鶴を見下ろしていた。
「……腹の傷、開きますよ」
さすがに乱暴が過ぎる気がして、宵は口を挟んだ。
「開いたらまた縫ってもらえばいい。何度でも」
亮の声は、先ほどともいつもともまるで違っていた。冷たくて平坦で、抑揚のない声色。
千鶴は何も返事をしなかった。脇腹をかばったまま、ベッドから降り、点滴を引きずって病室の外へと出ていってしまう。
「あ、おい……!」
「大丈夫、廊下で倒れても看護師さんがちゃんと病室まで運んでくれるよ。ICUの時も、二回脱走してたらしいし」
「脱走!?」

