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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「生意気言ってすみません。でも一個だけ……」
他人の色恋に、本来なら自分が口を挟むのは間違っている。それは宵にもわかっていた。
それでもどうしても、伝えたいことがあった。
宵の脳裏に、洞穴の中でぼんやりと佇む千鶴の姿が浮かぶ。
「なんだい?」
先を促す亮の声に、宵は亮の顔を真剣に見つめた。
「……大切なことを伝えないままで居たら、いつか二度と伝えられない場所に行っちゃいますよ、春加さん。ーーそうしたら、多分すげー後悔します」
洞穴の中でしがみついてきた千鶴の悲壮な声が、頭の中に響いていた。どうにもできなかった。桃華はもうこの世にいないのだ。千鶴の中の後悔は、ずっと消化されることのないまま残り続ける。
ほんの一時薄められても、生きてる限り消えない。自分だってそうだった。両親が離れて暮らすと告げられた日、もっと嫌だと騒げば良かった。何かが変わっていたかもしれないと、繰り返し思う。どうにもならないことを、何度も何度も思ってしまう。
千鶴がまた、そうやって負の感情に飲み込まれていった時、魔が差さないとも限らない。
「……そんな急に、強くはなれないです。考え方だって変えられない。それでも少しでも前向きに、春加さんが、幸せに生きていければいいなって、思います」
「それはーー彼女の甥としての願い?」

