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Memory of Night 2
第42章 入院生活

宵は軽く首をかしげた。
甥として、と言われても、それを知ったのもついこの前だ。血の繋がりがあったとわかって驚きはしたが、仮にそれがわからなかったとしても同じように彼女を助けた気もする。
ふいに亮の手が伸びる。胸ぐらでも掴まれるのを覚悟したが、そうはされなかった。
亮の手は頭に置かれ、ぽんぽんと撫でられる。
「……生意気じゃないよ。ーーありがとう」
亮は穏やかに笑った。
その顔は、店でよく見る接客用の取り繕ったものとは違った。観念し、何かを諦めたような、そんな顔だった。先ほどまでの苛立も、おさまったように見えた。
亮はベッドに備え付けられているテーブルを出し、ヘタを取ったいちごのパックをその上に置いた。
ティッシュで手を軽く拭き、持っていた鞄からクリアファイルを取り出した。
「ーーこれを見つけた時から、ずっと迷っていたんだ」
ぼそりと呟いた。
クリアファイルに挟まっていたのは、新聞記事の切り抜きのようだった。亮はそれをいちごの隣に置く。
記事の見出しを見て、宵は目を見開いた。
千鶴が話してくれた内容と記事の見出しを頭の中で照らし合わせ、ようやく亮の意図を理解する。

