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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「あと、こうも言ってた。どうして君をクビにしないのかって」
千鶴の心臓がドクンと音を立て、とっさに点滴のスタンドをきつく握りしめた。冷たいステンレス性のそれは、すでに手のひらから移った体温で千鶴自身とほぼ同じ温度になっていた。
埃まみれのベッドに腰かけたあとも、なぜかその棒を離さずにいたのだと千鶴は今さら気がついた。
ーーどうしてクビにされないのか、千鶴自身不思議に思う。
亮はよく店のためだと言うが、自分が店の売上に貢献してきたのなんて、ショーに出ていた頃くらいまでだ。あの頃は確かに稼いだ。
だが今はもう、自分にそこまでの価値はない。その上最近はやりたい放題だった。宵の家で酔い潰れ、桃華の話でかっとなり、早退したまま一週間も無断欠勤した。それだって、社会人としてはだいぶよくない行為だ。
その上撮影旅行では、事故で入院。宵まで巻き込み、大きな騒ぎになった。彼が口裏を合わせてくれれば高校生をこっそり働かせていたことは誤魔化せるかもしれないが、それだけが問題というわけではないのだ。
クビにされても何も言えない。むしろ、そうされない方が不自然ともいえた。
だからこれは、きっと当然のこと。

