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Memory of Night 2
第42章 入院生活

「……離れた方がいいのはわかってた。でもどうしても、そうしたくなかったんだよね」
亮はわずかにかがみ、千鶴に目線の位置を合わせ、そんなふうに言う。
今までこんなに真っ正面から亮自身の気持ちを伝えられたことはなく、千鶴は戸惑った。
「ずっと仕事を理由にしてたけど、それだけじゃないよ。ーーあと、最初に声をかけたのはただのナンパだった」
本当に? と思う。
またいつものように適当な言葉ではぐらされているのではないかと疑ってしまう。
亮はそんな千鶴の反応に、特に何か、信じさせるための言葉をかぶせてくることはなかった。いつものように、千鶴の反応を眺め、楽しんでいる様子もない。
自然体に見えた。
「僕のそばにいてほしいと思ったんだよ」
「……新しい店任されたら、離れちゃうじゃん」
「うん。だから、アパート引き払って僕の部屋においで。そこからの方が君に任せるバーにも近いよ」
「…………は?」
急展開すぎて、千鶴はついていけなかった。夢でも見ているのかと思った。新手のドッキリか詐欺か、そういう類いの嫌がらせではないのか。
だが、さらに驚くべきことを、目の前の男は平然と口にする。
「あと僕、名前変えたいんだよね」
「……?」
「二店舗めを出すのに、全く融資を受けれない今の状況だと何かあった時にヤバイかなって。『香椎』に、して?」

