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Memory of Night 2
第42章 入院生活

にっこりと、亮は笑う。三浦亮は本名だった。店で唯一亮は源氏名を持たない。
それを香椎にするということは。
「はあ……!? ……っ」
おもいきり叫んでしまい、反動で腹の痛みが増した。千鶴は前屈みになり、きつく脇腹を抑える。
どちらかと言えば、今のは折れた肋骨からかもしれないが、もうどちらからの痛みなのかもわからなかった。というかどちらも痛む。
「やだ?」
「……至上最っ底なプロポーズだなっ!」
「えー、ロマンに溢れてると思うけど」
どこがだ、と思う。
だが、千鶴が知る亮はどこまでも自分の私利私欲を優先させる人間なので、亮らしいとも思えた。
「返事は別にいーよ。とりあえず、君が退院するまで君の部屋片付けとくよ、すぐ引っ越せるよう。合鍵もあるし」
「……勝手にっ」
返事はいらないなどと言っておいて、それじゃ一緒に住むことは確定されたようなものだ。
「……いや?」
亮は千鶴の頬に手を伸ばす。そう見せかけて、首へとかけてきた。大きな手に無理矢理顔を上げさせられる。
「……いやって言われても、今さら逃がさないけど」
捕獲した獲物に言うように、亮はそう囁いてくる。
なんて身勝手なんだ、と思う。
それでも、逃げようなんて思う筈がなかった。ーーずっと諦めていた、千鶴自身の願いだ。

