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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

「そう言えば、イチゴもらった。あんたが出ていった時。少し食べて残りは冷蔵庫入ってるけど、食う?」
「あたしはまだ飲み食いできない。点滴しかダメなんだよ」
「……え、そんな状態なの? だったらなおさらおとなしく寝とけ、死ぬぞ。イチゴの件、マスターに礼言うの忘れちゃった、ありがとうございますって伝えといて」
「…………」
無視なのか、喋るのさえ辛いのか、返事はなかった。
結局亮とどうなったのかもよくわからないが、店を気にしているということは、クビではないのだろうか。そもそも、クビになりそうな話の流れでもなかったはずだ。
かなり気にはなっていたが、千鶴の体調を考えれば無理矢理話させるのも良くないだろうということで、宵は黙っていた。
すると唐突に、今度は千鶴から告げられる。
「そういえば、亮にプロポーズされたよ。近々入籍する」
「入籍!?」
さすがに驚いて、宵は千鶴のベッドの方に体ごと向けた。急に体勢を変えたことで、左足が痛んだ。ゆっくり姿勢を整える。
「……いろんな順番吹っ飛ばしてね?」
「名前、変えたいんだと」
「名前?」
千鶴は小さく息を吐く。
「洞穴でちょっと言ったろ? 昔ヤンチャしてたから、銀行で金借りられないって。そういうのって、名前と生年月日で弾かれるらしい。だから名字が変われば、融資やクレジットや車のローンなんかも組めるようになるとかなんとか」
「……へー」

