この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

突然話題が変わり、宵は最初首をかしげつつ聞いていたが、千鶴なりに今の状況を心配してくれてるのかと思い当たる。
「いや、あんたに誘われてバイト始めた時は就職するつもりだったんだけど、いろいろ変わって大学行こうと思ってたんだよね。本当は晃と同じ共通試験受けるはずだったけど……」
宵は右手を見つめる。包帯でぐるぐる巻きにされたそれは、まだ腫れも酷かった。骨のくっつき方によっては手術になってしまうかもしれないとも言われたが、加えて、若い医師はこんなふうにも言っていた。レントゲンの結果では、骨以外に酷い損傷は見当たらなかったという。だが指は腱や筋や神経など、たくさんの組織が複雑に絡み合っている。初見で見つからなかっただけで、組織のうちの何かが損傷している可能性だってゼロではない。もしそうなっていた場合、怪我をする前のように完全に治るかはわからないという。
損傷がなかったとしても、骨がくっつくまで長い間固定しとくわけだから、固まった筋肉をほぐすためリハビリはしなければいけない。
どうなったとしても、利き手がまともに機能しない期間が数ヵ月できてしまうというのは免れないだろう。おまけに左足の骨折もある。

