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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

合格祈願。その言葉に、わずかに胸が痛む。ほんの数日前に、今年受験することを諦めたばかりだったのに。
「俺のはいーよ。晃にやれば? なんだって喜ぶよ、多分」
「えー、宵にも渡すよ、去年いろいろお世話になったし。じゃあ、こっちで勝手に選んじゃうね!」
無邪気な声に、宵はどう伝えようか一瞬迷う。
「いらねーって。……受験、しないから」
「……え?」
明の声のトーンが変わる。
「どういうこと? 冬休み前まで進学するって言ってたじゃん」
戸惑ったような声が響いた。さすがに経緯を全て説明するのは大変すぎるので、宵は今の状況のみ簡潔に伝えた。
「……休み中に怪我して、入院してんの。しばらく退院できねーし、そもそも東北の病院だし、共通試験無理そう」
「東北!? なんで!? なんていう病院?」
なんだっけ、と思う。宵は部屋を見渡し、ちょうど病院の名前が書かれた貼り紙を見つけた。入院する時に厳守してほしい約束ごとが箇条書きで列挙されたシンプルな貼り紙だったが、その一番下の部分に、病院名があった。ここの土地名が入った、総合病院の名前だ。
それをそのまま、明に伝える。
「ーーえ? その病院てもしかして……」

