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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

少し間が空いたあと、明は県や町の名前を復唱した。続いて、近くに建っている自動車販売店の名前も。有名な自動車メーカーの名前に、宵もぴんと来るところがあった。
「救急車で運ばれてきたし道とか町とかあんまり覚えてねーけど、確かに窓からその看板見えるかも。向かいに建ってるよ」
「え……やば」
明はそう呟き、また少し間があく。
東北の山の麓(ふもと)の小さな町の中、有名メーカーの自動車のロゴは、目立っていた。逆に、それくらいしか目印になりそうな商業施設はない。家とアパートと畑と、コンビニがあるくらいだった。
スマホ越しに無言の状態が続く。わざわざ検索し、病院の場所を調べてくれたのだろうか。ちょっと不思議に思う。調べて、なんの意味があるのか、宵には明の行動の意図が理解できなかった。
「わかった、行く! ちょっと待ってて」
「…………は?」
一方的に通話を切られ、宵はスマホを眺めながらしばらく唖然としていた。
東北にいると伝えたのに、明はいったい何を言っているのかと思う。
熱でぼんやりとした頭では、思考もはかどらない。夢でも見ているような気分になった。
宵はそのままスマホを放り出し、再び眠りについた。

