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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

「ねえ、何言ってんの? さっき電話したばっかでしょ? あたしのことわからない? ……もしかして頭でも打って記憶喪失にでもなっちゃったの?」

 明の表情が、みるみるうちに曇っていく。本気で心配しているような表情をされ、どうやら先ほどのやりとりも夢ではなかったと知る。
 宵は起き上がろうと、左手に力を込めた。右手と左足が使えないと、日常のちょっとした動作にすら不便さを感じてしまう。
 看護師が、背を支えるようにして手伝ってくれた。

「一応運ばれてきた日に脳の検査もしましたが、異常は見られなかったので頭も記憶も大丈夫ですよー」

 そうしながら明に向かい答えたが、なぜか看護士の表情は憮然としていた。

「じゃあ、私は仕事に戻るけど」

 そこで言葉をいったん切り、声を潜めて宵に耳打ちした。

「余計なお世話かもしんないけど、あっちもこっちも手を出してたらいつか背後から刺されちゃうわよ。せっかく関東からお見舞いに来てくれたんでしょ? いくらなんでも記憶喪失のフリは可哀想よっ」
「……はあ?」

 こっちはこっちで何を言ってるのかと思う。

「今どきの子ってすごいわー……」

 ぶつぶつと何か呟きながら、看護士は部屋を出ていく。
 明は不思議そうな顔をしながらも、安堵の笑みを浮かべた。
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