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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

「じゃあ、家族待たせてんの?」
「パパとママと弟が車にいる。でも大丈夫だよ、ちょっと運転に疲れたって言ってたからちょうどいい」
「旅行中にわざわざ来てくれたんだ。ありがと」
ものすごい確率の偶然な気がするが、いくら近くにいたと言っても家族旅行中に同級生の見舞いのため病室まで来てくれるなんて、だいぶフットワークが軽い。
「入院なんて言うからさ」
明は宵の全身を、改めて見つめる。
「怪我って右手と左足?」
「そう。骨折した」
「骨折って……。何したの? また誰かと喧嘩でもした?」
一昨年の秋頃はそうだった。上級生に目をつけられ、六人に襲われた。その時も、左足にヒビが入ってしまい不自由な生活をしばらくしていた。さらに妙な薬まで打たれてしまい、入院していたのだ。
「いや、今回は普通に怪我した」
「怪我に普通なんてある!?」
明は呆れたように目を細めた。
「ま、いーや。左手は?」
「左手?」
宵は自分の左手に視線を向けた。
「左手は無事?」
宵が頷く。
左手は別になんともない。もし左手まで骨折してしまっていたら、いよいよ本当に一人では何もできなくなってしまう。

