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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

「……鬼じゃん。おまえは受験しねーくせに。つか別に倒れはしないだろ、試験で」
宵はノートを受け取った。表紙をめくり、一ページ目にシャーペンで、自分の氏名を書いてみた。利き腕じゃないのでかなり歪(いびつ)ではあるが、一応読めはする。
「ノートと筆記用具ありがと。練習するよ、左で書けるよう。ーー受験もちゃんとする」
ここまでされてしまっては、簡単に諦められない。
確かに左手でも、名前とマークシートさえ塗れれば受けられるのだ。受けてダメなら仕方がないが、受けもせずに諦めてしまうのは、かなりもったいない選択かもしれない。
「そうこなくっちゃ! あ、いいこと思いついた。ノートちょっと貸して」
明は宵に渡したノートをもう一度手元に引き寄せ、シャーペンを握った。ざかざかと描き始める。どうやら絵を描いているらしい。
「ーーできた!」
ほんの数分だった。にこやかに見せてきたのは、一ページ分まるまる使い描かれた、ある女の子の絵だった。
髪が長く、和装っぽい服を着ている。等身大のえんぴつを両手に抱え、とびきりの笑顔をこちらに向けている。しかも頭にハチマキのようなものを巻いていて、ハチマキには力強いタッチで『必勝』の文字だ。

