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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

「誰? 自画像?」
「そんな恥ずかしいもん描かんわ! それはね」
明は笑った。
「受験の女神様」
「なんだそれ」
だからえんぴつを持っているのか、と思う。
「それ持っとけば受かる! じゃ、お大事に! また学校でね」
家族を待たせているからだろう。明は手を振り、さくっと出ていってしまった。
遠方で学校の友達に会うというのは、なんとも不思議な気分になる。
「……誰?」
ふいに横から声がした。眠っていたはずの千鶴が起きたようだ。
「あー、クラスメ……」
クラスメイトと言いかけて、一瞬躊躇する。
「友達」
宵は言い直した。ここまでしてくれて、クラスメイトの一言で片付けるのは明にも失礼な気がしたからだ。
「俺、やっぱ受験するわ」
「ふーん。ガンバレ」
千鶴の棒読みの応援を受け、宵がノートを再び広げようとした時だった。
ノックと共に看護師が入ってくる。
昼食を台車に乗せていた。
宵のもとに来て、昼食が乗ったトレイを置いてくれようとした瞬間だった。宵が看護師の腕を掴む。
「わ……何? ……私子供も旦那もいるし、高校生は守備範囲じゃな……」
「ねえ、先生呼んで。ーーすぐ、退院したいんだ」
看護師は目を真ん丸にした。
まずは退院し、一刻も早く帰って準備をしたかった。受験のために。

