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Memory of Night 2
第44章 リハビリとマッサージ

ぼそりと、呟くように答える。それで察してくれたようだった。
母は絶句した。黙ってしまった母からは、驚き以外の感情は読み取れない。
しばらくなんの言葉もなかったが、ようやく一言返ってくる。
「どうして言ってくれなかったの?」
「言ってどうすんの?」
晃は冷たく言い放った。
「ーー中学、高校の六年間、母さんが俺の交遊関係に興味を持ったことなんてあった? 知ろうとしたことなんて、あった?」
部屋に女性を連れ込んでいても、夜遊びをしていても、大人しか入れないようなバーにこっそり入店していた時も。
決して素行がいいとは言えなかった学生時代の自分の交遊関係に、何一つ、母も父も気付いていなかっただろう。
「……それは」
母は押し黙る。重い沈黙だった。
やがて、一言だけ。
「……ごめんね」
「別にいいよ」
晃は母から目を逸らした。初めて見る顔だったからだ。
泣きそうな目をしていた。別に、母を責めているわけじゃない。
看護師として昼夜働いている母を、晃は尊敬していた。小さい頃はもっと一緒にいてほしいと思っていたけれど、限られた時間の中で、精一杯の愛情を注いでくれたこと、歳を重ねるうちに気付けるようになった。
「仕事が忙しいし、仕方ないよ。……ごめん」
「それだけじゃなかったのよ」

