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Memory of Night 2
第44章 リハビリとマッサージ

母はそれきり黙りこみ、何度か首を振った。
「あなたはいつも手のかからない子供だった。……なかなか子育てと仕事を上手く両立できなくて、小さい頃から一人にしてしまうことが多かったのに、寂しいって駄々をこねることもないし、反抗期もないし、昔からとってもいい子だった。勉強も運動も人並み以上にできて、家庭訪問も三者面談も、先生に褒められた記憶しかないもの。あなたはいつだって、私達夫婦の自慢の子供だった」
そう言って、母は微かに笑った。
「中学も高校も一緒。通知票もテストも、いつだって高かった。だから交遊関係を心配したこともなかったわ。あなたの周りには真面目でいい子が多いんだろうって。お父さんと同じ医大に行きたいって言ってくれた時も、すごく嬉しかった。手をかけなくても、あなたはきっと私達が望む通りに真っ直ぐ育つだろうって安心してた。医大に行って、立派な先生になってーー」
そこで母の言葉は途切れる。わずかに間があき、静かに続ける。
「素敵な女性と結婚して、可愛い孫の顔を見せてくれるだろうって……」
「ごめんね、最後の二つはきっと叶えてあげられない。ーー俺はこの先もずっと、宵と生きてく」
晃は真剣な眼差しで、母を見つめる。
例え反対されたとしても、それだけは譲れない。

