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Memory of Night 2
第44章 リハビリとマッサージ

「……あなたがそんなに必死に何かを欲しがる姿を見るの、何年ぶりでしょうね。まだ園児だった時以来じゃないの? 晃がそうしたいなら、お母さんは反対しないわ」
そうして微笑んだ。
「大切な人に出会えて良かったね。私も宵くんのことは好きよ。昔から知ってる子だから、安心。また連れていらっしゃい」
「……うん」
晃は頷き、言った。
「ーー俺、小さい頃家で一人でいるの、寂しかったよ。中高の時の素行も、全然良くなかった」
「……そっか」
「母さんは昔から俺にいろんな物買ってくれたけど、本当はあんまり嬉しくなかった。すぐ飽きちゃうんだ。……手料理作ってくれるのが、一番嬉しかった」
「……そう。いつでも作ってあげるわよ、ご飯くらい」
母の声がわずかに震えていた。
親にここまで本音を話したのは、初めてかもしれない、と思った。
母はしんみりした空気を振り払うように、明るく言った。
「受験、頑張るのよ! あと受かったらアパートも決めなきゃならないし、引っ越しだってあるんだから家にも戻ってくること! 東京で初めての一人暮らしなんだから、週一で電話くらい寄越しなさいよ! あと月一で帰ってくること! ……宵くんも一緒でいいから、顔くらい頻繁に見せなさい」
「わかったよ」
晃の母は微笑んだ。
「ーー行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そうして家を出て、宵のアパートに戻ってきたのだった。

