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Memory of Night 2
第45章 卒業

「あ、良かった。寝坊しなかったんだね」
「しねーよ!」
確かにいつもは起こしてもらうけど、という言葉をぐっと飲み込む。
晃も今日二次試験だったが、場所は東京だ。今日の天気予報に小さな雪だるまマークげあったのだ。おそらく降っても電車が運行中止になることはないと思われたが、念のため前日から現地のホテルに母親と泊まっていた。
昨日の夜も電話で受験票と筆記用具の確認、それからアラームはちゃんとかけたかなど聞かれ、もう本当に保護者のようだと思う。
「受験票は忘れてない? 筆記用具は最悪借りれるかもしれないけど、受験票はーー」
「あーもう大丈夫だって! 三分前に鞄見て入ってるの確認したよ!」
本当に、周りはみんな受験票の心配ばかりする。
「ごめんごめん。つい……」
心配しすぎて鬱陶しく思っている宵の気持ちを察したのか、電話の向こうで晃は噴き出した。
それから、改めて応援の言葉をくれた。
「左手であんなに文字書く練習もしたんだし、きっと大丈夫。受かるよ」
「うん、おまえも」
努力はきっと実る。そんな都合のいい格言を、今は信じるしかない。
晃との通話を切ると、少し離れたところから聞き慣れた声がした。

