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Memory of Night 2
第45章 卒業

「おーい、宵!」
顔をあげると、クラスメートの大山となぜか隣には明もいた。
「……おまえ、こんなとこまで応援に来たの?」
「だって大山が、不安不安言うからさ」
「……き、きき、緊張で胃が痛くて……」
大山は見るからにげっそりしていた。
「もう! 普通に受ければ大丈夫だって! 大山、昨日からずっとこんななんだもん。あたしいい彼女過ぎない?」
「…………暇人すぎるだろ」
「失礼! てか宵、あんたちゃんと受験票持ってきた? 無いと受けれなーーわっ」
本日三回目の『受験票持ってきた?』に、反射的に口より先に手が出てしまう。
持っていた鞄を振ると、明の腕に綺麗にヒットした。
「もー、なんで殴るのよー! てか鞄軽っ! なんも入ってないでしょ! 直前まで参考書見てねばろうとしなさいよー!」
そうこうしているうちに、集合時間が近付いてくる。
両手を振り回す明に見送られ、宵と大山は建物内へと入っていった。
筆記と面接、全て終わったのは予想した通り夕方だった。
電源を切ったまま放置していたスマホを開くと、着信がずらり。また千鶴かとも思ったが、そうではなかった。晃から一件。他の着信や留守電は全て弘行からだった。
何事かと思って慌てて弘行に折り返した宵に、思いもよらない吉報が届く。
「ーー宵くん! 産まれた、さっき!」
「……え?」
「君の妹だよ……っ! 三二〇〇グラム!」
橙色に染まったグラウンドで、思いがけず春が舞い込んできたーー。

