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Memory of Night 2
第45章 卒業

ーー試験日の寒さが嘘のように、その日は暖かかった。風もなく、柔らかな陽光が差している。
桜の蕾が春の訪れを告げていた。
南風(なんぷう)高校の体育館からは、卒業式の定番である『仰げば尊し』が響き渡っていた。
(今日で卒業か……)
歌が終わり、宵は心の内で呟いた。
怪我での入院やら受験やらであっという間に月日は流れていってしまったが、こうして制服を崩さずに着て式に出席していると、今日で本当に卒業なんだなと実感が湧いてくる。
校歌を歌い、卒業証書を受け取り、いつもほとんど右から左に聞き流しているだけの校長の話にもちゃんと耳を傾けた。
来賓の挨拶や祝電が読み上げられ、在校生からの送辞が終わると、卒業生代表の挨拶がある。
その挨拶をするのは、なんと晃だった。
(そう言えばあいつ、ずっと学年トップの成績キープしてるんだった)
なんだかそれが当たり前になりすぎていてすっかり忘れていた。東京の受験から戻ってきて、晃からそのことを初めて聞かされた時は驚いたが、考えてみればずっと主席をキープしているのだから選ばれて当然だろう。
晃は背筋を伸ばして階段を登り、壇上に立った。
澄ましたその顔は、見慣れた優等生の顔だ。

