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Memory of Night 2
第45章 卒業

いきなりなんてことを言うんだ、と思う。
ざわつきが大きくなるのも構わず、晃は続けた。
「優秀な成績を修め続けてここに立たせていただいているのに、こんなふうに言うのはとても失礼かもしれないですが、俺はずっと自分を『欠陥品』だと思って生きてきました」
「……ーー?」
さらにざわつきが大きくなる。
宵は驚いて、ちらりと後ろを振り向いた。
今日は卒業式。晃の両親だって来ているはずだ。めったに会えないと言っていた父も来ると聞いていたのに、どうして突然自分を欠陥品などと言うのか。
晃はもう、見慣れた優等生の顔ではなかった。貼り付けたような完璧な笑顔が、今は剥がれ落ちている。
「『欠陥品』という言葉も、正しいかはわかりません。ただ、幼い頃から自分には、ずっと何か大切なものが欠落しているような気がしていました。勉強も運動も人よりできました。それは他でもない、両親からの賜物でしょう。他人とのコミュニケーションも、それなりに取れていた自負があります。……たいした努力もせずに、何一つ必死にならずにそれなりのモノを手にしてきた俺は、多分端から見たら、罰(ばち)が当たるほどの幸せものだったはずです」

