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Memory of Night 2
第45章 卒業

ボタンだけでもとブレザーごと脱がされそうになり、逃げてきたのだった。
「俺のも一応公開告白のつもりだったんだけどなあ」
「……は!?」
驚いて、宵は勢いよく顔をあげた。
「冗談だよ」
晃が笑う。どこかいたずらっぽい笑顔だった。
「……なんでいきなり、答辞にアドリブぶっこんだわけ?」
「ーー本当のことだから」
晃はそこで、笑うのをやめた。
「世界に色味が無かったのも、君に出会って色付いたのも、俺に春が来たのも、全部本当のことだから。もし君に出会ってなかったら、俺の人生はモノクロのまま、つまらないままだった」
晃は座ったままの宵に視線を合わせるように、しゃがんだ。
「本当のことを、ちゃんと言いたくなったんだ。……大袈裟でもなんでもなく、君に出会えたことが、この学校に来て得られた一番の宝物かもしれない。ーーありがとう」
後ろの木に晃は片手をついた。宵は晃の体と木に挟まれるような格好になる。そのまま口付けられていた。
唇が離れる。
ぎゅっと抱きしめられ、今度は耳元でもう一度同じ言葉が繰り返された。
「……ありがとう、宵」
想いは溢れて、綿のように飛んでいく。
柔らかな風が吹いていたーー。

