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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
だいぶ遠回しに言っているが、ようは現場で何かされても責任は負えないということだろう。
秋広は藤巻と桃華を交互に見やった。
年齢も雇用形態も全く違う男達の中に、若くて美しい女性をぽん、と放り込むようなものなのだ。そういう心配が出てくるのもわかる。
「はい、わかりました」
相変わらず表情に乏しい顔で、桃華は頷いた。
藤巻はにっこりと笑う。
「まあ、無理はしないようにね。何か困ったことがあったら、お気軽にうちの神谷に相談したらいいよ。……ね!」
「あ、は……はい!」
藤巻に背を叩かれ、半ば傍観者の気分で二人の会話を聞いていた秋広は慌てて背を正した。
「きっと親身になって、香椎さんの話を聞いてくれる」
「ーーそういうの、結構です。もう話は終わりですか?」
「うん、終わりだよ」
「では、来週からよろしくお願いします」
桃華は立ち上がろうとする。だが一瞬早く藤巻が机の上に右肘をのせた。
「その前に、私とも勝負してくれないかな、腕相撲。神谷に圧勝だったそうだね」
「……?」
桃華は一瞬怪訝な顔をする。
秋広も驚いていた。藤巻はもうとっくに還暦を迎えていて、秋広が入社してからずっと現場で何か作業をすることはなかった。年齢もそうだし、事務仕事ばかりだろうから、腕力なんて無いだろう。

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