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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

「久しぶり。腕の骨折は良くなったか?」
「うん、もう大丈夫だよ」
「なら良かったけどな」

 相澤は笑った。

「スーツなんか着てこんなとこ来たら汚れるぞ」

 そういう相澤は、会社支給の紺色の作業着を着ている。
 場所により指定もあるが、会社から支給される作業着ではなく個人で用意したものでも問題はない場合がほとんどだった。外仕事に適した服装であれば、そこまでうるさくは言われない。
 だが、秋広は黒いスーツ姿なので、さすがに浮いているし汚れも目立つだろう。

「大丈夫、安物だし。ちょっと様子を見に来ただけだから」
「ああ、あの女(こ)でしょ?」

 相澤が視線を向けた方を秋広も向いた。ガタイのいい年輩の男の後ろについている、華奢で小柄の人影。会社で支給された作業服に身を包んだ桃華だった。

「呼んできてやるよ」
「え……」

 正直そこまでは、と思ったが、相澤は行ってしまう。
 相澤に連れられ、目の前にやってきた桃華は作業用のヘルメットを外した。

「その髪……」

 秋広は驚いて、ついその顔を指差していた。
 ついこの前まで肩くらいまであった漆黒の髪は、耳が出るくらいまで短く切られていた。大胆な短髪だ。
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