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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
腕相撲で負けたことや、藤巻社長と相談の末働いてもらうことになった経緯など相澤に話した。
作業現場からちょうど死角になる場所に秋広を連れていき、そこでこっそりとたばこに火をつけた。本来なら、休憩中以外の喫煙は禁じられている。美味しそうに紫煙をくゆらしながら、相澤は爆笑した。
「女に簡単に負けんなよ、力比べで。好きってわけでもないの?」
「い……いやいやいや」
首を振る動作さえ、不自然なほど固くなる。まるで首振り人形だ。
「ま、さっきの様子だと脈ゼロっぽかったもんな」
「……だから、そういうのはないって」
相澤は腹を抱え、さらに豪快に笑う。
能面みたいに無表情のまま秋広からの質問にのみ答え、十秒ほどで戻っていってしまった。
脈などないだろうし、眼中にも自分はいないだろう。
差し入れの菓子を渡し、相澤と別れ秋広は事務室へと戻るため車に乗り込んだ。
(ちょっと男の子みたいだったな……)
短髪姿も、だいぶ印象は変わるがあれはあれで似合っていた。
(桃華さんて笑わないのかな)
ーー大切な人といる時は、笑うんだろうか。
ふとそんな考えがよぎる。
桃華の笑顔を見てみたい。そんなふうに思いながら、秋広は車を発進させた。

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