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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
それからもしばらくの間は桃華が配属された現場から特に相談の連絡はなかった。
秋広もたまに現場のメンバーに連絡を取る機会があれば、彼女の様子を聞いたが、その程度だ。特にトラブルの話などもなかった。
桃華は順調に仕事を覚えていっているという。
秋広は安心していた。やはり自分が気にかける必要などなかったみたいだ。
そう、思っていた矢先のこと。桃華が入社して二ヶ月半になろうかという頃。昼過ぎに、秋広の携帯に一本の連絡が入った。
名前を見ると、相澤だった。
「どうかした?」
「あー……連絡おまえにいれるか迷ったんだけどさ」
そう前置きが入る。嫌な予感がした。
「香椎さんが、今日早退したんだよ。朝から具合悪そうで、顔色も悪かったから牧原(まきはら)さんの判断で、昼休憩の直前くらいに帰した」
牧原は桃華の指導を頼んだ秋広の先輩でもある人だった。職人気質でたまにぶっきらぼうな物言いで誤解されることはあるが、面倒見がいい。秋広も新人の頃は、建築の基礎を牧原から教わった。
「……疲れが出たのかな? 最近急に寒くなったしね、風邪引いちゃったかな」
今は十一月だ。秋も終わり、冷え込むようになった。

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