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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
「え……コンロ?」
秋広は昼前に桃華の部屋を訪ねた。チャイムを鳴らし出てきた彼女は、寝起きのようだった。
「あ、はい……。ガスが要らないコンロです」
「……?」
状況も箱ごと差し出されているものも寝ぼけていてよく理解できていないのか、返事はない。
だいぶ間があり、一言返ってきた。
「食材無いよ。……つか冷蔵庫も壊れた」
「……え!?」
「ま、夏の間はどうにかもってくれたからいいけど。そんな感じだからコンロは要らない」
そのまま閉められそうになるドア。秋広は慌てて自分の腕を挟み込み、閉まるドアを食い止めた。
「あ、あの、じゃ作ります! 僕! 昼!」
「…………」
つい、そう言ってしまってから思う。だからそもそも食材が無いのである。
桃華はまた、いつものようにじっと秋広を見ている。出会ったばかりの頃は緊張し、その視線から逃げたい一心であたふたと顔を背けたりしていたが、だんだんとその視線にも慣れてきたような気がする。
だがさすがに見つめ返すことはできず、秋広は下を向いていた。
やがて桃華は部屋の奥に消え、すぐに財布を持って戻ってきた。
「じゃ買い出し行ってきて。スーパーすぐそこ」
財布から取り出した万札を一枚、秋広に手渡した。
「よろしく」
「え、あ……」
返事をする前にドアが閉まる。
予想外の展開に、秋広は呆然とした。

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