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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 台所に立つ母は、いつだったかそんなふうに言って、秋広を居間に戻したのだった。
 それからなんとなく、母の手伝いはしなくなった。してほしくないんだろうとわかったからだ。
 直接的な言葉では言われていないが、きっと母は秋広に男らしくいてほしかったのだ。
 秋広が好きなものや興味があることを口にするたびに、やんわりと軌道修正されることがたびたびあった。
 それが蓄積していった先に、今の仕事があったように思う。

「でもやっぱり、好きなことはなかなかやめられないので……。お弁当作ったり、休みの日は家事や編み物ばかりしてしまいます」
 あまり自分の趣味を人に打ち明けたことはない。男のくせに、と思われそうだからだ。
 小さな頃の思い出が浮かんでくるまま、桃華に話してしまったが、引かれてしまったかと急に不安になった。
 だが桃華は、変わらない表情のままぽつりと言った。

「……窮屈に感じたりしない? そういうの」
「え? 窮屈、ですか?」

 何に対してなのかわからず、秋広は問い返す。

「母親に、好きなことを伝えられなかったんだろ? 自分の本当に好きなものを理解してもらえずに、あっちの望む通りに生きるの、窮屈じゃない?」

 望む通りに。そう考えたことはなかったが、言われてみれば確かに、工業高校への進学も、土木関係の会社に就いたのも母に言われたからだ。
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