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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

「美味しいご飯が作れても、働いてお金を稼げなければ生きていけないので。僕、昔はよく風邪を引く子供だったので、外にたくさん遊びに出て体を強くしてほしかったのかなと。あ、高校は工業高校だったんですけど、それも母に勧められてでした。……それも普通高校より就職に有利だから、じゃないかなと。ーーしっかりしなさい、男らしくしなさい、は、自立した大人になってほしいって気持ちの言い換えみたいなニュアンスだと思うんですよね。だから別に、窮屈だと感じたことはないです」

 秋広は笑ってそう答える。
 母のおかげで今の自分があるのだ。頑張っても土木の現場で一人前にはなれなかったが、同じ会社で、自分に合った仕事を貰いどうにか生きていけている。
 自分は人に恵まれている、と思う。

「ふーん」

 桃華の返事はいつもと同じ。興味がない話に頷く時のそれと言葉だけを見れば一緒だったが、いつもとはどこか違う気がした。
 彼女の灰色の瞳が秋広を捉える。だがすぐに逸らされた。

「ーー少しあたしと境遇が似てる気がしてたけど、あんたは上手くやれてんだな……」
「……え? それって」

 どういう意味なのだろう。
 東北の家族の元を離れて、一人でここに住んでいる今の境遇に関係があるのだろうか。
 尋ねようとしたが、その瞬間にピンポンが鳴った。続いてする声。
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