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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 桃華はタッパーを開けた。
 にんじんや練り物、椎茸なども入っていたが、芋はないようだった。

「あ、これなら大丈夫ですよ。じゃがいもが入ってると足が早いので、少し早めに食べないとですが入ってないので」
「ふーん、わかった。ありがと。ーーでもまあ、冷蔵庫は買うか」

 桃華は腕を組み、稼働していない冷蔵庫を見つめる。

「その方がいいと思いますが……」

 お金はあるのだろうか、と秋広は心配になった。

「よく差し入れ持ってきてくれるんですか?」
「ああ、ばーさん? うん。最初は断ってたけど、しつこくて。でも美味しい。しょっちゅう持ってきてくれるから、礼にお金渡そうとしたら断られて、しょうがねえから家賃多めに振り込んだらすごい形相で返しにきて、ヤマンバかと思ってビビった」
「はは、ヤマンバ……」
「もうめんどくさいから、あのばーさんが留守の時に野菜とか果物玄関に置いてくようにした。一回返しにきたけど、あたしって証拠はないからね!」
「……鶴の恩返しみたいなお礼の仕方だね……」

 頑なに礼を受け取らない大家もすごいが、それでもどうにか礼をしようとする桃華にも笑えた。
 自分が桃華の状況なら、差し入れの礼は諦めてしまうかもしれない。

「でも、ばーさんの料理、あんたと同じくらい旨いよ」
「それは、光栄かも」

 秋広は、自然と口元が綻んだ。
 身内以外に料理を振る舞ったことはほとんど無かった。美味しいと言って、ばくばく食べてもらえたことがとても嬉しかった。

「いろいろ食材入れとくのに、冷蔵庫ってどれくらいのサイズが必要?」
「え?」
「冷蔵庫買っとくから、また暇なとき昼飯作りにきて」
「あ、え、……はい、喜んで!」

 桃華からそんな申し出がくるとは思ってもみなかった。
 秋広は大きく何度も頷いたのだった。
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