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絶対的下僕の末路
第1章 【玩具はお前だって言ってんの】
「ごちそうさま、ケンジくん」
そう言ってバイクの方に脚を進める。
ヘルメットを渡されキャスケットを外すと両手塞がっているのを良い事に首の後ろから引き寄せられ強引にキスされた。
そう、今まさに迎えに来たこの男に。
なんて独占欲にまみれた瞳。
ジロッとチャラ男を睨みつけるとそそくさと居なくなっちゃった。
「何してくれてんの?あんたの分際で」
ヘルメットを装着しながら毒を吐く。
周りに別の男が居ればこうしてドスの効いた睨みで追い払うが、いざ二人きりになれば立場は私の方が上。
「ごめんなさい」
さっきと打って変わって子犬のような眼差し。
「でも良い子、19分で着けたね」
「沙羅ちゃん絶対ナンパされると思ったから飛ばして来た」
「ん……帰りも飛ばして、早く帰ってシャワー浴びたい」
「了解」
ニッコリ白い歯を見せて笑うこの男こそが私に長年懐いている下僕。
幼馴染みと言えば聞こえは良いが、幼い頃から泣き虫で私の後をついて回っていたヘタレなだけ。
お互い二十歳になって成人したは良いけどまだこの下僕関係は相変わらずな訳で。
ブォン…!と吹かすエンジン。
気が小さいくせに見た目は私と同じで整った顔。
うざったい金髪ロン毛ではなく、耳まで見えてる黒髪。
Tシャツから見えてる筋張った腕筋に本当は触れたくて仕方ない。
彼は私が大好きで仕方ない、大学まで一緒のところ受験して追っかけしてくるような理系男子。
三津谷 伊織。
名前だけ見たら女のコみたいでしょ?
実際そんなとこあるから。
爽やかな青年で通ってるかも知れないけど、中身はドM。
私に無理難題突きつけられるのが快感らしいよ。
コイツとはずっとこんな感じ。
タンデムシートはお尻が痛くならないよう革張り。
乗ったら手を回す身体は細いけど極真空手やってたから結構筋肉はついてる方。
飛ばして来たって家から19分で来れる距離じゃないのに。
昨日遊んでた場所付近でウロウロしてたんだろうなって思ったら少しだけ抱きついてあげる。