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絶対的下僕の末路
第4章 【だから命令してあげてるじゃない】
「悪い虫がつかないように守りなさいよ、堂々としてれば良いの」
「あ………はい」
しつこいナンパとかだったら人格変わって追い払いに来るくせに。
今はまるでその要素ナシ。
今までの私なら、寄って来る男が減るじゃないと言って伊織を避けていた。
見せつけるように誰かと触れ合って蜜をばら撒き平気で迎えに来させるような悪女だったのだ。
でも今は違う。
何だか見せびらかしたくなった。
伊織が私の男だって。
認めるよ、大事だってこと。
傍に置いておきたい。
離れたところからじゃなくて一番傍で守らせたい。
もう他の女が寄り付かないようにって牽制でもあるけど。
いや、むしろそれ目的な訳で。
悔しいから絶対に言ってやんない。
恋人繋ぎから腕を絡めて歩いてく。
隣を見上げるとモサモサした髪がやや気になった。
「髪切らないの?切れば?」
何気ない会話だったように思うが、自分の髪を触ってはチラチラとこちらを見るので「ん?」とアイコンタクト。
顔を真っ赤にしてこう答えるのだ。
「この長さが一番、沙羅ちゃんが掴みやすいかなって思って」
「え?私?ちょっと、DVしてるみたいじゃん、やめてよ」
「違う違う」と次に小声で「クンニしてる時」って言うから私も同じように真っ赤になった。
バカ!こんなところで言うな!
切れ!今すぐ!
どんな髪型しようが掴んでやるよ。
嬉しそうに笑う横顔がなんだかんだ言っても一番好きなのかもって気付いた。
クラスが違うから分かれる二人。
涼しそうな顔して微笑むからムカつくんですけど。
泣きながらバイバイとかすれば良いのに。
「沙羅ちゃん11時には終わるよね?僕は10時45分だから待ってるね?あ、待ってて良いよね…?」
なに、その最後はビビり倒してる口調。
階段の踊り場。
まだたくさんの学生が上り下りしている中で。
「待ちたい?」とやはりS発言。
「待つ!何時間でも」って変わらぬドM回答。
この主従関係は一生変わらない。
それを隠れて楽しんでいたけどそれも惜しいかなって。
ゆっくり講義室前まで歩いて、本当は同じ階の隣同士で分かれて入る。
バイバイと挙げた手に指を絡めて真っ赤になる伊織を拝んだ後。
踵を上げて触れるだけのキス。