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トパーズ
第12章 長いお別れ
黒田先生は、
私の誕生日どころか、
クリスマスもお正月も、
仕事で帰って来れないということになった。
しかも、ネットの回線の問題でスカイプも出来なくなった言われて、
携帯も殆ど繋がらず、
メールが時々来るだけになってしまった。


「私がそっちに行くから!」と言ったけど、
先生は勿論、
山田くんにも止められてしまった。


「受験、終わらせようよ?
受からないと先生だって気が気じゃないでしょ?」と山田くんに諭されて、
渋々同意した。


何校か受験して、
私は慶応の医学部と北大の医学部に受かった。

山田くんも北大の医学部に受かった。

ミラノは、散々私立は惨敗で浪人になるかとハラハラさせたけど、
最後に奇跡が起こり、京大に受かった。

国立は発表が遅かったから、
卒業式も終わってしまった。

受験結果が出揃ったところで、
山田くんが話があると言って、ミラノと私をタクシーに乗せた。


そして、東京郊外にある病院に連れて行った。

そこは、普通の病院ではなくて、
終末医療を専門にしている所謂ホスピスだった。


嫌な予感で、
背中に冷たい汗が落ちる気がして、
指先まで冷たくなって、
倒れそうになる。


山田くんはそんな私を抱き締めて、
「黙っていて、ごめんね」と静かに言った。


ミラノも、
「山田、なに?
どういうことだよ?」と言っているが、
その声も遠くに聴こえる。


「一度、外に出ようか?」と言われて、
中庭のベンチに座った。

色が少し濃い桜が咲いているけど、
ソメイヨシノはまだ蕾が固いようだった。

私は手を固く握り締めて、
自分の手だけを見ていた。
涙がそこに溢れる。


「黒田先生、9月にこっちに来た時、
顔色とか痩せ方が気になって、
先生に検査をしてくれるように頼んだんだ。
それで…膵臓癌が見つかった。
ステージ4だった。
島の病院では対応出来ないから、
父の病院に入院して貰ったけど、
年齢のこともあって進行が早くて。
少しでも痛みを取ることしか出来ないから、
ここに転院したんだ」


「どうして…?
どうして教えてくれなかったの?」


「ごめん。
麻衣子に言ったら、
勉強も何もかも捨てて、
俺と一緒に居ることを選択するだろう。
言わないでくれって…」


「私…。
知りたかった。
先生が死んじゃうとしたら尚更、
一緒に居たかった…」
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