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トパーズ
第18章 オータム・イン・ニューヨーク

奥の部屋に入ると、
ソファを勧められた。
コーヒーを淹れようとしてるので、
簡易キッチンに一緒に立って手伝おうと、カップを出しながら左手の薬指を見ると、
ブルートパーズとダイヤモンドの大振りな指輪を嵌めていた。
自分の右手の薬指にインペリアルトパーズの指輪と重ねて嵌めたブルートパーズの入った小振りな指輪とお揃いのデザインなのはすぐに判った。
そっとミケーレを見ると、
私の指輪には気づいてないようだった。
3人で静かにコーヒーを飲んだ。
パチパチと暖炉の焔が音を立てるのをぼんやり聴いていた。
「ご旅行ですか?
留学生かな?」と訊かれたので、
「新婚旅行みたいなものです」と私が笑うと、
「随分とお若く見えるけど?
東洋人の年齢は判らないな」と言うので、
「19歳です。
麻衣子です」と手を出して握手を求めると、
優雅に手の甲にキスをしてくれる。
「そちらのサムライボーイは無口だね?」と言うので、
「タケヒトです」と私が紹介すると、手を伸ばして握手をしながら、
「マイケルです」と名乗った。
「えっ?マイケル?」
「ええ」と言いながら、
コーヒーを啜る。
「ここの画廊は長いんですか?」と訊くと、
「40年ほどかな?
もう私も歳だから、そろそろ締めてしまって、
隠居しようと思ってるんだ。
家族も居ないから、故郷に帰るか、
ここで暮らすか…」と静かに言った。
「故郷って?」
「イタリアですよ。
ミラノ郊外…」
「じゃあ、マイケルじゃなくて、
ミケーレ…?」
「その呼び方をするのは…
故郷を離れた後は、1人だけだったな」と、
遠くを見るような目で言った。
「ウィンドウの写真の方ですか?」
静かに頷くと、
「私の最愛の女性。
私の全てだった。
ある日、小鳥が飛び立つように消えてしまったよ」と寂しそうに笑った。
岳人さんの手が震えているので、
ギュッと手を伸ばして握った。
「あの…個人的なことを訊いてしまって、
失礼しました。
コーヒーもご馳走様でした。
そろそろ失礼します」と言うと、
「いつまでのご滞在ですか?
コーヒー飲みたくなったら、
いつでもお立ち寄りください」と言いながら、
ゆっくり立ち上がろうとして、
少しよろけてしまうので、
慌てて岳人さんが支えた。
「タケヒト、ありがとう」と言って笑った。
ソファを勧められた。
コーヒーを淹れようとしてるので、
簡易キッチンに一緒に立って手伝おうと、カップを出しながら左手の薬指を見ると、
ブルートパーズとダイヤモンドの大振りな指輪を嵌めていた。
自分の右手の薬指にインペリアルトパーズの指輪と重ねて嵌めたブルートパーズの入った小振りな指輪とお揃いのデザインなのはすぐに判った。
そっとミケーレを見ると、
私の指輪には気づいてないようだった。
3人で静かにコーヒーを飲んだ。
パチパチと暖炉の焔が音を立てるのをぼんやり聴いていた。
「ご旅行ですか?
留学生かな?」と訊かれたので、
「新婚旅行みたいなものです」と私が笑うと、
「随分とお若く見えるけど?
東洋人の年齢は判らないな」と言うので、
「19歳です。
麻衣子です」と手を出して握手を求めると、
優雅に手の甲にキスをしてくれる。
「そちらのサムライボーイは無口だね?」と言うので、
「タケヒトです」と私が紹介すると、手を伸ばして握手をしながら、
「マイケルです」と名乗った。
「えっ?マイケル?」
「ええ」と言いながら、
コーヒーを啜る。
「ここの画廊は長いんですか?」と訊くと、
「40年ほどかな?
もう私も歳だから、そろそろ締めてしまって、
隠居しようと思ってるんだ。
家族も居ないから、故郷に帰るか、
ここで暮らすか…」と静かに言った。
「故郷って?」
「イタリアですよ。
ミラノ郊外…」
「じゃあ、マイケルじゃなくて、
ミケーレ…?」
「その呼び方をするのは…
故郷を離れた後は、1人だけだったな」と、
遠くを見るような目で言った。
「ウィンドウの写真の方ですか?」
静かに頷くと、
「私の最愛の女性。
私の全てだった。
ある日、小鳥が飛び立つように消えてしまったよ」と寂しそうに笑った。
岳人さんの手が震えているので、
ギュッと手を伸ばして握った。
「あの…個人的なことを訊いてしまって、
失礼しました。
コーヒーもご馳走様でした。
そろそろ失礼します」と言うと、
「いつまでのご滞在ですか?
コーヒー飲みたくなったら、
いつでもお立ち寄りください」と言いながら、
ゆっくり立ち上がろうとして、
少しよろけてしまうので、
慌てて岳人さんが支えた。
「タケヒト、ありがとう」と言って笑った。

