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そぶりをやめて
第19章 250日
具を並べ終えたホットプレートのプレート部分を、テーブルまで運んできて、器具の上に乗せている。
入っていた袋の説明書きを読んで、スマホでタイマーをかける。

「汐里がめっちゃ忙しそうに働いてるって」

お店にいる時から、仕事中の佳佑にLINEが入りまくっていたらしい。
休憩の時にスマホを見て、LINEの未読数にぞっとしたらしい。

3人ともが、忙しすぎて疲れている風に見えた汐里を気遣ってくれていて。
佳佑が、家事を手伝ってるのか。とか。
わがまま言って困らせてるんじゃ。とか。
たまには早く帰って晩御飯でも作れ。とか。
セックスは程々にしろ。とか。

「んもぅ!れいちゃん!!」

恥ずかし過ぎる。
そんなの言うのは、れいちゃんぐらいだ。

「いや、セックス云々は松木。だったような...」
「ゆーな...」

松木とは、ゆーなの旧姓だ。
ゆーなまで...。

ブツブツと煮えてきたパエリアが、いい匂いしてきた。


「で。まぁ、たまたま今日は定時で上がれそうだったからさ」

洗濯物を洗濯機から出して、窓際に干してるやつも取り込んで、畳んで。
それでも時間があったから、苦手分野の料理もしようかと。
パエリアの素を思い出して、野菜を切って。

「ありがとう...」

そう言えば、窓際の洗濯物がなくなってる。
それより気になるのはー。

「そのエプロン、どうしたの?」

そんなの、持ってたっけ?
カラフルでサイケデリックなマ〇メッコ柄風?のエプロン。
もちろん女性ものだろう。似合わな過ぎ。

「あー、これ?あっちの棚の中にあった。ビニールに入って」

あっちと、指さしたのはキッチンだ。
何かの景品だったのだろう。
全然覚えてないし。

「汐里、...着たい?」「いや。着ない」

食い気味で否定しとく。
にやけ顔から、何を言いたいか予想がつく。

「でも、ほら。一度はさ、裸にエプ...」
「しません。ほら、もう鳴るよ」

スマホのタイマーが鳴った。
蓋を開けると、いい匂いがぶわっと立ち上がる。

「美味しそう〜!」
「うっわ、上手に出来たんじゃね?」
「はいはい。いただきまーす!」
「うっまー!俺天才〜」
「うっまー!K〇LDIさまさま〜!」

奪い合うように取り合って、あっという間に完食した。
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