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そぶりをやめて
第4章 1ヶ月と3日
数日前まで雨が降っていたらしい。

しかし、ウエディング・フォト後にこのカフェに来ることが、どうして分かったんだろう。
沢山お客さんもいらしてるのに、よく覚えたとも思うし。

そんな素敵な店員さんが、2人にこそっと耳打ちしてきた。

「カレー、一人前だけなんですけど、お取り置きしてますので。よかったら注文して下さいね」

ただただ、2人で驚くしかない。

「え...」「どうして...」

ふふふと、嬉しそうに笑っている。

「この間、すっごく悔しがってらっしゃったので。内緒ですよ」

凄い。
すごすぎる、この人。

鉄人?
接客のプロにもホドがある。

「じゃ、カレー!お願いします!」
「はい。野菜カレーですね」
「えっとー、私は...。うーん。やっぱり、ピザ!にします!」
「はい。ピザランチ。以上でよろしいですか?」
「はい。とりあえず...」

ケーキは、またランチが終わってから。

「はい。お待ちください」

にっこり笑って颯爽と厨房のほうへ戻っていった。

「...びっくりなんだけど」
「おー。カレーの事まで、な」

そんなに印象に残るほど『カレーが食べたかった』と、騒いでたかな。

ウェディング・フォトのことは、“若干”騒いだ記憶がある。
質問しまくって、パンフレット以外の写真も奥から出して見せてもらって。

その場で電話までしてもらって。
たまたま開いていた、今日のこの日をその場で予約した。

そりゃ記憶に残ってるか。


同じウェディング・フォトのパンフレットを部屋の隅のラックで見つけて、またテーブルに広げる。

表紙は、佳佑と汐里も最初に撮ったのと同じ竹林でのカップルが写った写真が大きく載っている。
3つ折りを開くと、各種コースに内容や金額が書いてあって、その周りに小さな写真がいくつか。

汐里たちと同じように、芝生の上に転がってるやつや、夕日にだがジャンプしてるのもあった。

2週間前は、ただ素敵だなと思っただけだが、撮り終えた今はこれらの写真の苦労が忍ばれる。

「お待たせしました〜」

ほどなく料理が運ばれてきた。
カレーもピザもすごく美味しそうだ。

「「いただきます!」」
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