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そぶりをやめて
第1章 0日婚 ~当日
結婚を決めてからまだ2週間ほどなわけで。

実際、指輪のことは気に止めてなかったというか。
他のことに気を取られて、すっかり忘れていて。

佳佑の母親と何か電話でハナシをしていて、その流れで婚約指輪どころか結婚指輪も買ってない事に気付いた。

汐里的には、別に指輪なんてーと思っていたのだが。
妙な事に、母親から聞いた佳佑が慌てて電話してきた。

なんでも、仕事柄指輪はしていたほうがいいらしい。


3日前、こっちに転勤で戻ってきたばかりの佳祐と一緒に、車で30分ほどかけて県庁所在地にある某高級デパートに閉店間際に駆け込んだ。

ネットで下調べはしていたものの、コロナ禍で閉店時間が早まっていて、ものの15分ほどで決めないといけなかった。

当然、その結婚指輪が届くのは、早くて3週間後である。

「そりゃそうよー」
「どこの?どこの?」
「あのデパートなら、ほら。あそこじゃん」
「だよねだよね」

指輪で盛り上がる女性陣をよそに、男性陣は少し落ち着きだしたようだ。

「あれ?そこどこ??」

「新居。新居。〇〇市だよ」

〇〇市とは、地元にほど近い県内2番目の市である。

「おー。まっけー、こっち帰ってきたんだ?」

地元の銀行に勤めている佳佑は、ここ数年、某主要都市にある支店に転勤していた。
年齢的に、そろそろ地元に帰れそうだと年始のリモートで話をしていたのだ。

「そうそう。それがあってね。ついでに結婚してみた」

汐里の横でしれっと言い放つ。

「何はトモアレ、おめでとう」
「飲み会してーな。コロナ終わったらな」「ねー」
「だな。夜も遅いし、もう寝るわ」「だねー」
「じゃ」「またねー」

日曜の夜10時近かったのもあって、ほとんどのメンバーが、そこで去っていく。
残ったのは、汐里と仲がいい、ゆーなとれいちゃんの2人だけだ。

「俺も、もう風呂入って寝るわ」

佳佑もそれを期に立ち上がる。

「ああうん」「いってらー」「おやすみー」

ドアの向こうに行ったのを確認して、コソコソと話し出す。

「しっかし、水臭くない~?」

予告もナシに結婚したのを、れいちゃんは不服そうだ。

「そうだそうだ!」

ゆーなは、面白がっているようにも見える。

「ごめんって。いや、私もさ、本当に今日まで、冗談じゃないかと思ってたんだもん」
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