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そぶりをやめて
第9章 160日 〜その1〜
電話の向こうでまくし立てる母親の言い分を聞いて、とりあえず電話を切る。

汐里がどうこう出来る話でもないし。
あの2人が決めた事は、きっと覆せない。

「なんだって?」

話しの見えない佳佑が、心配そうにしている。

「ごめんね。大したことナイんだけどー」


兄、成道が料理人として務めているホテルのレストランは、このコロナ禍でめちゃめちゃ影響を受けた。
地元のさほど大きくないホテルで、元々そんなに賑わってるほうではなかった。
それでもたまに、宴会や、講演会、ごく稀にディナーショー。そして、結婚式。
それらが徐々に減っていって、今は半数を切るほど。
クビまではいかないが、交代勤務になっていて。
もちろん収入も激減した。

そこで、自分でお店を開くことにしたらしい。
各地で色んな飲食店で働いていた強みで、大概なんでも作れる。
多国籍料理をメインとして、とりあえずお弁当屋をして、ゆくゆくカフェをする。

お店は、家から自転車で通えるほどの所にある小さな商店街。
古く寂れて閉めていたお店も多かったが、最近オシャレな店がぽつぽつと出来てきたとか。
そこを借りる手筈も既に整えているらしい。
来月から改装を初めて。
翌11月から開店予定だとか。

何もかも決まってから両親に伝えたらしく、兄の奇行に慣れてはいても流石にびっくりしているようだ。


「確かに急だもん。怒りたくもなるだろうね。しかし、益々言いづらくなっちゃった」

汐里も、勤務先の弁護士先生が、年内いっぱいでの廃業を決めたばかりだ。
先生が同業者の先生を紹介してくれるとは言って下さったが、このコロナ禍で、しかも地域に弁護士事務所はさほど多くない。
まるっきり別の業種を考えなくてはと思っている。

廃業の話を8月末に伝えられて。
この旅行の直前だったこともあり、終わってから両親に言うつもりにしていた。

いつもなら楽観主義、みたいな汐里も、30半ばでの、しかもコロナ禍での転職はキツそうに思う。


新婚旅行気分で、まったり楽しく過ごしていたのに、一気に現実に引き戻された。


「大丈夫だよ」

心配そうな佳佑に優しく抱きしめられる。

具体的な何かを言ってくれるワケではないが、なぜだろう、不思議と安心する。

ハグ効果?
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