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そぶりをやめて
第10章 160日 〜その2〜
「で、気づいた。俺は、汐里が好きなんだよ」

一緒にご飯食べたり。
ゲームで競い合ったり。
洗い物を並んでしたり。
休みの日は、どことなく出掛けたり。
日々のたわい無い会話や、隣にただ座ってるだけでも。

毎日が、凄く楽しくなって。
こんなに楽しいと思えるのは、汐里だから。

そして、そんな汐里をいつの間にか大好きになってたから。

「...ホントなんだね」
「うん。本当だよ」

佳佑の本気を、急に実感する。

確かに、この1ヶ月ほど、佳佑は凄く楽しそうに過ごしている。

なんだか顔が熱い。

「好きだよ、汐里」

また唇が近づいて、そっと重なる。

「...好きだ」

ほぼ触れる距離で囁いて、吐息がかかる。

吸い込まれるように、今度はわずかに開いた唇から舌が触れる。

「ん...」

次第に舌が大きく触れ合って、深く絡まってゆく。

角度を変えて何度も互いを貪る。

腕で互いを引き寄せ、体を寄せる。

「汐里...」
「...んっ」

雰囲気に飲まれてしまったかも。

そのまま抱きついてしまったし。

「汐里が、俺の事なんとも思って無いのは知ってる。俺も、最初の頃はきっと同じだったし」

そこに恋愛感情が無いから、友情の上に成り立つ協議結婚をしたつもりだった。

だけど、今は。

「好きになったし。汐里にも、俺の事好きになって欲しいと思ってる」

夫婦生活はまだ始まったばかり。
汐里に好きになって貰えるよう、ちょっとづつ頑張る。
そのうち、汐里も佳佑が好きになるかもしれない。

「とりあえず、好きって言ってみて」

何を言い出した?

佳佑の顔を伺おうとするも、がっちり抱きしめられていて、声でしか判断できない。

なんだか震える声で、泣き出しそうな声にも聞こえた。

「ウソでもいいから。少しでも俺の事、好きでいてくれるなら...。言ってみて欲しい」

そんな、ウソでは言えない。
でも声が少しづついつものカンジになってきた。

「嫌いじゃないんでしょ。さっき、そう言ってたじゃん?」

そうだけど...。

「とりあえず、言うだけ。お願い。俺の折れそうな心の為に」

大袈裟な。
しかも、なんかセリフっぽい。

そうね。セリフなら言えるかも。



「...好き」

「聞こえないな」


ひとつ、おおきく深呼吸。



「好き。佳佑、大好き」
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