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禁断の自由形
第1章 水泳部の夏合宿
「桜川は来ないんですか?」
センター長の泉谷は残念そうな顔を隠さずに落胆した。
聞けば、泉谷は桜川の大学のOBで、桜川の頼みならと 他校からの利用予約をキャンセルまでして ノビノビとセンターを利用してもらおうと手筈を整えてくれたのだそうだ。
ほんとに申し訳ありません…
平謝りすると、全然気にしないでくださいと言ってくれたものの やはり残念そうなオーラが泉谷の全身を覆っていた。

20室ほどある宿泊部分は帰りにちゃんと清掃してくれるのであれば自由に使用してかまわないと言ってくれた。
吉本としては、クラブの部員同士の結束や友好を深めるためにも 数名ずつの相部屋にしたかったのだが、またもや大ブーイングに負けて各自に個室を与える羽目になってしまった。
初日は各自のコンディションを整えるという意味で自由時間を与えた。

これが奏をきたし、女子生徒は心を開いてくれて吉本に話しかけてくれたり おやつを差し入れに来てくれたりした。
『騒がしいけど、いい子ばかりじゃないか…』
よし、明日からはビシビシと鍛えるぞ!
吉本は俄然やる気がでてきた。

夕食後、センター長の泉谷がリクレーションを兼ねて肝試しを用意してくれていた。
近くに神社があるので賽銭箱の上に置いてある御札を取ってくるという たわいもないお遊びだった。 だがその神社にたどり着くには墓地の中を歩いていかなければならないという。
生徒たちは面白がって、やる気マンマンだった。

2人ひと組でやろうということになったのだが、部員が奇数なので 自然と一人が溢れてしまった。 「じゃあ、俺と行こうか」
吉本は部長の相川育美とペアを組んで最終組でスタートした。
墓地に差し掛かると、相川は女の子らしく吉本の腕にしがみついてきた。
肘に当たる胸のふくらみが心地よかった。
「ねえ、先生…」
先生は怖くないんですか?という言葉を期待したが予想を覆すような言葉が続いた。
「先生は…童貞ですか?」
この言葉には肝試し以上にヒヤリとさせられた。
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