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バツイチと言わせない
第1章 出会い
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていると
我が家に引っ越し業者のトラックが停車してるのが見えた。

歩みを進めるうちに
そのトラックが我が家ではなく
隣の家の前に横付けされているのだとわかった。

『そういえばずっと空き家だったお隣に引っ越して来る人がいると昨夜母さんが言ってたっけ…』

まあ、俺にはどうでもいい話だと思いながら
トラックの横をすり抜けて我が家の玄関に入ろうとすると後ろから女性の声に呼び止められた。

「こちらのお宅の方ですか?」

はあ、そうですが何か?
エプロン姿に軍手をした年の頃は30代前半といったところか…

「あ、ごめんなさい、
私、今日ここへ引っ越してきた赤坂と言います。
引っ越しの挨拶をと思って…
それで、お父さんかお母さんいる?」

「父は海外赴任なのでいません。
母は夜の8時ぐらいに帰ってくると思いますが…」

童顔で小柄な康介を中学校に通っている男の子とでも思ったのか、
問いかけの言葉が子供に話しかけるようだったので康介は少しムッとしながら答えた。


「そうなんだ~。
じゃあ、8時ごろ訪ねてみるね。
あ、私、希美子。赤坂希美子よ、よろしくね」

「康介です。八木康介」

「康介君か~。いい名前ね。何年生?」

「S高校2年です」
高校生であることを強調して、
学校名をことさらはっきりと言った。

「そっか、高校生なんだ~」

高校生だとわかっても口調は変わらない。
もしかしたらこの人はこういう話し方なのだろうなと理解した。
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